多摩管弦楽団第46回定期演奏会では

2曲目にシベリウス《ヴァイオリン協奏曲》を演奏します。

 

常任指揮者・高橋俊之による解説【シベリウス:ヴァイオリン協奏曲】

 

シベリウスは7曲の交響曲と交響詩を含む数多くの管弦楽曲を残しているが、協奏曲はこの一曲だけである。

 

この協奏曲も春の歌と同様に改訂されている。初稿は1903年に完成し初演もなされた。2年後の1905年に改訂稿が発表され、ベルリンにおいてカルル・ハリールの独奏、リヒャルト・シュトラウスの指揮よって初演された。


ベルリンに滞在していたシベリウスはこの協奏曲を改訂しようと考えていたところ、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴く機会があった。これに対し「とても素晴らしい作品だ。しかし、あまりにもシンフォニック過ぎる。」と妻アイノへの手紙で感想を述べている。とはいったものの、シベリウス自身の協奏曲の改定は、カデンツァなどのヴィルトゥオーゾ的なパッセージを数多く削るなど、むしろブラームスのものに近づいたようにも思われる。


この曲はヴァイオリン協奏曲としては、オーケストラの編成が大きく、それまでの、正統な協奏曲においてはトローンボーンが用いられることはなかった。しかし、シベリウスの音楽は大編成を用いても静寂を作り上げる所に特徴がある。冒頭のオーケストラの伴奏も、それがあることにより、無音よりもむしろ静かな雰囲気が作られていて、丁度、人気のない所でソロヴァイオリンが弾き始めたような情景が映し出される。


全曲の構成は至って正統的な協奏曲のスタイルを踏襲している。第1楽章はソナタ形式で、第一提示部こそないが、展開部には壮大なオーケストラの件があり、カデンツァが楽章の中央にある点なども含め、形式的にはチャイコフスキーのものと酷似している。第2楽章はゆっくりした3部形式で、第3楽章がロンド風なのも古くからの書法である。そうしたスタイルを守りながらも、暗闇の中か森の中のような人の気配を感じさせない所で、旋律が聞こえてくるような場面が現れるのがシベリウスの特徴である。もちろんフル編成の豊麗な響きをつくるところもあるが、そういう場合にも激情的な表現にはならない。


彼の最初の作品といわれている「水滴」JS216という曲がある。子供の頃のもので24小節程の曲であるが、ヴァイオリンとチェロの2重奏で、すべてがピッチカートで出来ていて、水滴の様子がよく表現されている。元々こうした情景を描写することが得意で、作曲家になってからも彼の大きな個性の一つとなった。

 

 ≫参考動画 【水滴】

 

このような優れた音感が感じられる部分がある一方で、ニューグローブ世界音楽大事典でも指摘されているように、シベリウスの作品の中には、愛好家からしか評価されないような作品も少なくない。しかし、この協奏曲は世界的に愛されており、ヴァイオリニストのレパートリーとしてもなくてはならない曲である。


先人からの協奏曲という書式の中からも、シベリウス特有の情景が描かれている。