【チャイコフスキーとシベリウスの生い立ち】 ●第4回

 

シベリウスについても作曲家として身を立てるまでの生い立ちをみてみたい。モーツァルトやベートーヴェンは職業音楽家の家系であり、音楽の早期教育を受け、物心の付く前から相当な訓練を受けてきた。その点、チャイコフスキーやシベリウスの幼少期は、あくまでも文化教養の一環として他の習い事と同じように音楽の稽古をしていたに過ぎない。


19世紀のフィンランドでは急速に音楽が広まり、アマチュアの音楽活動も盛んに行われるようになった。シベリウスの両親の家系も皆何らかの形で楽器または声楽をたしなんでいて、この時代のフィンランドの典型的な音楽愛好家の一族だった。


1865年、ジャン・シベリウスはハメーンリンナで生まれた。ハメーンリンナは首都ヘルシンキから北西に90キロ程離れたところにある。

 

シベリウスの父クリスティアンはこのハメーンリンナで医者をしていた。彼は学生の時に学生合唱団で歌っていたこともあり、リュートの弾き歌いを趣味としていた。だが、この父は47歳の若さでこの世を去った。職業柄多くの病人と接している父クリスティアンは、伝染病のチフスにかかってしまったのだ。

 

シベリウスの母マリアは大変な苦労を強いられた。というのは一家の大黒柱を失っただけではなく、クリスティアンが莫大な借金を残して逝ってしまったからである。自分の財力を考慮しない贅の尽くし方、度を越した飲酒など、父クリスティアンはまるで後年のシベリウスの姿とそっくりだった。

 

ただ、当時2歳半でしかなかったシベリウスには、この父の記憶はほとんど残っていない。

 

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【チャイコフスキーとシベリウスの生い立ち】 

はじめに

●第1回 チャイコフスキーの幼少期 〜趣味音楽をたしなむ父母、家庭教師の影響〜

●第2回 法律学校で学びながらピアノに向かう 〜母の死、そして、音楽の潤い〜

●第3回 脱サラして音楽の道へ 〜熱心に学び、活動をスタート〜

●第4回 音楽愛好家一族に生まれたシベリウス

●第5回 厳格な母方の環境、自由な父方の環境

●第6回 フィンランド語系の学校へ転入 〜カレワラを学ぶ〜

●第7回 シベリウスの音楽的興味 〜ヴァイオリン奏者を目指す〜

●第8回 新設音楽院では優等生のシベリウス

●第9回 留学地ヨーロッパでのシベリウス

●第10回 チャイコフスキーとシベリウスの特徴

●第11回 勤勉なチャイコフスキー

●第12回 好きな事に熱中するシベリウス