【チャイコフスキーとシベリウスが生まれた国  〜ロシアとフィンランドの基礎知識〜】  第11回:最終回

 

フィンランド人の民族意識について考えるためには、「カレワラ」に触れなくてはならない。

 

ニコライ祇い虜澎銘罎任△1835年、医師であるリョンロートはフィンランド東側のカレリア地区を歩き、その地の伝承(詩歌)を収録し、それを叙事詩「カレワラ」として発表した。その評判が良かったので、さらに調査を続け、補筆し1849年に改訂版を完成させた。

 

この叙事詩は古代フィン人に思いを寄せた神話で、その後の民俗学の研究テーマ、あるいは、美術、音楽の創作材料ともなって、フィンランド人全体に大きな影響を与えた。シベリウスの初期の作品クレルヴォ交響曲やレンミンカイネン組曲もこの「カレワラ」が題材となっている。

 

タイトルのクレルヴォやレンミンカイネンというのは「カレワラ」の登場人物であり、わが国の神話でいえばスサノウノミコトやオオクニヌシノミコトを題材にしているのと同じことである。


シベリウスが持っていた祖国愛の度合いを知ることはできないが、少なくとも、フィンランド独自の文化を興そうという雰囲気の中に彼の活動があった。

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【チャイコフスキーとシベリウスが生まれた国  〜ロシアとフィンランドの基礎知識〜】 

はじめに

第1回 隣近所のロシアとフィンランド 〜音楽の中心地ヨーロッパは遠く〜

第2回 ロシアの出発点 〜キリスト教を取り入れて〜

第3回 ヨーロッパと分かれていくロシア

第4回 宗教芸術の違い 〜芸術として発信するか否か〜

第5回 東方正教の宗教芸術 〜美術的価値尺度で発信をしない〜

第6回 東方正教の音楽 〜楽器使用の禁止、声楽だけ〜

第7回 ロシアの鐘 〜日本で一般的にイメージする「教会の鐘」と異なるトレズヴォン〜

第8回 西欧音楽の伝来 〜グリンカを経てチャイコフスキーへ〜

第9回 フィンランドの出発点 〜スウェーデン支配によるキリスト教化〜

第10回 フィンランドを巡る戦い 〜シベリウスの時代に至るまで〜

第11回:最終回 フィンランド人の民族意識 〜シベリウスも題材にした 叙事詩「カレワラ」〜